飲食店の経営・原価管理

飲食店の原価率とは?計算方法・目安と物価高騰への対策を解説

公開日:更新日:内容確認日:執筆:金岡 陸

「売上は変わらないのに、月末に残るお金が減った」。食材の仕入価格が上がると、これまでと同じメニューを同じ値段で販売していても、飲食店の利益は圧迫されます。農林水産省も、食品産業のコスト上昇や価格転嫁について情報を発信しています。[1]

こうしたときに確認したいのが、売上に占める食材費の割合を示す「原価率」です。ただ、数字を下げることだけに目を向けると、お店の魅力まで損なうことがあります。原価率の計算から始めて、仕入れ、ロス、価格、売り方を順番に見直していきましょう。

本記事の金額・割合は、仕組みを説明するための仮定の数値です。業界平均や実在店舗の実績ではありません。計算例はすべて税抜金額で統一しています。

飲食店の原価率とは?2つの計算方法

飲食店の原価管理では、料理やドリンクに使う食材・飲料の原価が、販売価格や売上に対してどのくらいの割合になるかを見ます。この記事では、この食材原価率を「原価率」と呼びます。人件費、家賃、水道光熱費などは別に把握し、最終的な利益を確認するときに合わせて考えます。

メニュー別:1皿あたりの食材費から計算する

メニューの原価率(%)=1皿の食材原価 ÷ 販売価格 × 100

たとえば、食材費300円の料理を1,000円で販売する場合、原価率は30%です。肉や魚などの主材料だけでなく、付け合わせ、米、油、調味料なども含めて計算します。下処理で食べられる部分が減る食材は、実際に使える量を基準に単価を出すと、見積もりのずれを減らせます。

店舗全体:棚卸しを含めて月の実績を確認する

月の食材原価=月初の食材在庫額+当月の仕入額−月末の食材在庫額
店舗の原価率(%)=月の食材原価 ÷ 同じ月の飲食売上 × 100

月初在庫20万円、当月仕入95万円、月末在庫10万円なら、月の食材原価は105万円です。飲食売上が300万円の場合、原価率は35%になります。日本政策金融公庫の勘定科目の説明でも、売上原価は期首在庫や仕入れに期末在庫を反映して捉えています。[2]

仕入額だけで計算すると、まとめ買いした月や在庫を取り崩した月に数字がぶれます。月末に同じルールで棚卸しを行い、売上と食材費の対象期間、税込・税抜の基準も揃えましょう。

原価率の目安はどう決める?

原価率の目標は、業態、食材の品質、価格帯、人員配置、家賃などによって変わります。たとえば30%という数字を置く場合も、その比率で必要な利益が残るかまで確かめる必要があります。高い原価率でも、十分な販売数や客単価があり、ほかの費用を賄えていれば成り立つ場合があります。

まずは「売上から、人件費・家賃・光熱費・その他の経費・確保したい利益を引くと、食材費にいくら使えるか」を計算します。そのうえで、店舗全体の目標と、看板商品やサイドメニューそれぞれの役割を決めると、現場で使える基準になります。

原価率が5ポイント上がると、利益はどう変わる?

飲食売上が月300万円で変わらず、原価率が30%から35%になった場合を考えてみましょう。人件費などの条件は変わらないと仮定します。

計算例:同じ売上でも、月の食材原価は15万円増える
項目原価率30%原価率35%
月の飲食売上300万円300万円
食材原価90万円105万円
食材原価を引いた粗利210万円195万円

原価率の差は5ポイントですが、粗利は月15万円減ります。ここから人件費や家賃などを支払うため、もともと利益が薄いお店では影響が大きくなります。なお、この表の粗利は食材原価だけを引いた金額で、最終的な利益ではありません。

原価率が上がったときは、仕入単価だけでなく、廃棄・盛り付け量のばらつき、値引き、高原価メニューへの注文の偏り、棚卸しの数え間違いも確認しましょう。原因によって、有効な対策が変わります。

物価高騰に対応する5つの打ち手

1. 主力メニューから原価を計算し直す

まずは販売数の多い料理から、最新の仕入価格でレシピ原価を更新します。原価表を作ったときの単価が残っていると、「以前は利益が出ていた商品」を今も同じ感覚で売り続けてしまいます。仕入単価、1皿の使用量、販売価格、月の販売数を並べ、影響の大きい商品から確認します。

2. 仕入れは、使い切るまでの費用で比べる

単価だけでなく、送料、最低発注量、納品頻度、下処理後に使える量、作業時間まで含めて比べます。安い食材を大量に買っても、使い切れず廃棄が増えれば負担は大きくなります。品質や安定供給を保ちながら、規格の変更や旬の食材への置き換え、発注量の調整を仕入先と相談しましょう。

3. 廃棄・作りすぎ・盛り付けのばらつきを減らす

廃棄した食材と理由を記録し、曜日や時間帯ごとの注文数に合わせて仕込み量を調整します。計量器やレードルで1皿の量を揃えると、品質の安定と原価管理を両立しやすくなります。農林水産省も、需要予測や食材の有効活用など、食品ロスを減らす取組を紹介しています。[3]

お客様に気づかれないように量や品質を落とす進め方は、満足度を損なうおそれがあります。小盛りを選べるようにするなど、お客様が納得して選べる形を考えましょう。

4. 価格は、1皿の粗利と注文数を見ながら調整する

食材費が300円から360円に上がった料理を、1,000円のまま販売すると、原価率は30%から36%に上がり、1皿の粗利は700円から640円に減ります。同じ30%を維持する価格を逆算すると、360円÷0.30=1,200円です。

ただし、計算どおりに値上げすれば利益が増えるとは限りません。価格変更後の注文数や来店頻度も確認します。食材へのこだわりや提供価値、価格変更の理由を分かりやすく伝え、看板商品の価格、セット構成、サイズなどを組み合わせて検討しましょう。[1]

5. 原価率と一緒に「粗利額×販売数」を見る

原価率が低くても、ほとんど売れない商品では店舗全体への貢献は限られます。売れ筋、1皿の粗利、販売数、調理にかかる手間を並べて、メニュー構成を見直しましょう。看板商品で来店動機をつくり、追加注文の選択肢で粗利を補うなど、商品ごとの役割を決める考え方もあります。

たとえば粗利600円の商品が100食売れると6万円、粗利500円の商品が200食売れると10万円です。割合の良し悪しに加え、実際にいくら残るかを見ることが大切です。

行列ができるお店は、収益のつくり方も見直す

すでに席数や回転数に限界があり、行列ができているお店では、来店数を増やす以外の収益づくりも検討できます。たとえばスルチケは、食事代とは別に、優先入店のためのファストパスをスマホで販売できるサービスです。「待つ時間を短くしたい」というお客様のニーズに応える選択肢になります。

導入時は、通常のお客様への案内や販売人数を決め、手数料とスタッフの対応負担を含めて検討します。飲食の原価率と優先案内の収入は分けて把握し、お店全体に残る利益で効果を確認しましょう。スルチケの仕組み・料金を見る →

まず取り組みたい原価管理のチェックリスト

すべてを一度に変えるより、数字を確認しながら優先順位をつけて進めましょう。

原価率と、手元に残る利益を一緒に見る

物価高騰への対応は、最新の仕入価格を把握し、原価率が上がった原因を見つけることから始まります。仕入れやロスの改善、価格やメニューの見直しを重ねながら、お客様が感じる価値と店舗に残る利益の両方を守っていきましょう。

原価率は経営を判断するための指標の一つです。比率が下がったかに加えて、粗利額、販売数、人件費なども合わせて追いかけると、自店に合う打ち手を選びやすくなります。

参考資料

  1. 農林水産省「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化の取組について」
  2. 日本政策金融公庫「勘定科目の説明」
  3. 農林水産省「17の目標と食品産業とのつながり:目標12に対する取組」